内科の症状

腹痛

腹痛について

当院の消化器外来を訪れる患者様の症状のうち、最も多い症状が腹痛です。
腹痛が起こる原因には、消化器疾患以外にも膀胱炎や尿路結石といった泌尿器疾患、月経痛や子宮筋腫といった婦人科疾患、帯状疱疹といった皮膚科疾患など多岐にわたるため、これらの病気を鑑別するために問診や視診、聴診、触診などの丁寧な診察がとても重要となります。

【画像】ビジネスマンの腹痛

頻度の高い原因

  • 消化器疾患
    逆流性食道炎、胃炎、胃潰瘍、機能性ディスペプシア、十二指腸潰瘍、胆石、胆のう炎・胆管炎、膵炎、感染性腸炎、虚血性腸炎、虫垂炎、憩室炎、便秘、過敏性腸症候群、腸閉塞(イレウス)、S状結腸軸捻転、がんによる通過障害 など
  • 泌尿器疾患
    膀胱炎、尿管結石、腎盂腎炎 など
  • 婦人科疾患
    月経痛、子宮筋腫、卵巣捻転 など
  • 皮膚科疾患
    帯状疱疹 など

当院の診療方法

当院では腹痛の原因を事前診察である程度絞り込んだのち、必要に応じて血液検査や尿検査、腹部X線検査、腹部エコー検査、胃カメラ、大腸カメラなどを行い、迅速な確定診断と最適な治療法の選択に役立てています。
また、小倉医療センターの放射線科と連携し、CT撮影が必要な際にはインターネット回線を通じて当院から直接予約のできる体制を整えています。

便秘

便秘について

便を十分量かつ快適に排出できない状態を便秘といいます。
一般的に女性はホルモンの影響で若い頃から便秘がちの方も多く、便が数日出ないことに対してもある程度の耐性を獲得していますが、男性は高齢になって初めて便秘になる方も多く、「昔は毎日快便だったのに、最近スッキリと便が出ない」といった不快感を抱えて治療を希望される患者様が年齢とともに増える傾向があります。

また、便秘はその原因によって、(1)腸の狭窄によって起こる「器質性便秘」、(2)腸の動きの問題で起こる「機能性便秘」、(3)糖尿病やパーキンソン病など病気の症状として起こる「症候性便秘」、(4)睡眠薬や抗精神薬、鎮咳薬など薬の副反応で起こる「薬剤性便秘」の4つに大別され、このうち「機能性便秘」はさらに、①加齢による腹筋の低下や運動不足によって腸の蠕動(ぜんどう)運動が低下して起こる「弛緩性便秘」、②ストレス等をきっかけに自律神経による腸の運動調節が乱れて不規則に痙攣を起こす「痙攣性便秘」、③便を我慢する習慣や浣腸の乱用によって排便反射が減弱して起こる「直腸性便秘」の3つに分けられます。

【イラスト】便秘の種類

頻度の高い原因

  • 女性ホルモン
    黄体ホルモンには大腸の蠕動(ぜんどう)運動を抑える作用があるため、月経前に便秘がちとなります。
  • トイレ事情
    学校や職場、旅行などでトイレを我慢してしまい便秘になることがあります。
  • 加齢
    加齢に伴い腹筋が低下し、大腸の蠕動運動の低下や便意を感じる知覚が弱くなることで大腸に貯まった便が体外に排出されず、便の水分が過剰に吸収されて便が硬くなります。
  • 腹部手術
    手術後に腸管が癒着し、物理的に便の通過が妨げられることがあります。
  • 大腸憩室
    慢性便秘などで腸管の内側から大腸の壁に高い圧力がかかり続けると、粘膜の一部に憩室という小さな袋状の凹みを形成することがあります。憩室のほとんどは無症状ですが、高度になると残便が増え便秘が悪化する原因となります。
  • 向精神薬や抗不安薬・睡眠薬など
    これらの薬は副交感神経を抑制し(抗コリン作用)、腸の蠕動運動を阻害するため、長期間服用すると便秘になることがあります。
  • 糖尿病
    糖尿病の合併症により自律神経が障害されると、胃や腸の働きが悪くなり嘔気や便秘を引き起こすことがあります。
  • 甲状腺機能低下症
    甲状腺ホルモンには腸の蠕動運動を促進する働きがあるため、これが不足することにより便秘になることがあります。
  • パーキンソン病
    神経細胞の変性により腸の蠕動運動が低下するため、高頻度で便秘となります。
  • 便秘型過敏性腸症候群
    ストレスを感じると脳からストレスホルモンが分泌されます。このホルモンが腸に作用すると蠕動運動のバランス調整が乱され便秘の原因となることがあります。

当院の診療方法

問診や聴診、触診で便秘のタイプや便通の頻度を確認したのち、X線透視装置で便の性状や腸管ガス、腸の動きなどを客観的に評価します。
また、残便感やお腹の張りが長く続く方や便の細い方、便の量が少ない方は、大腸がんを除外するために大腸カメラ検査をおすすめしています。

便秘の治療薬には、便の水分量を増やし柔らかくするお薬や、大腸を刺激し蠕動運動を促すお薬、胃腸全体の動きを活発化する漢方薬、乳酸菌やビフィズス菌などを配合し腸内環境を整える整腸剤などがあります。
当院では患者様の症状や生活スタイルにあわせて適切な治療薬を選択しています。

下痢

下痢について

下痢は「一日あたりの通常の排便回数より、軟便や水様便が3回以上増加している状態」と定義されます。
原因としては細菌やウイルスなどの感染症が最も多く、生肉や生牡蠣などを摂食したり海外渡航時に不衛生な水を飲むことで感染することもあれば、すでに腸炎に感染した同居家族などから接触感染や飛沫感染でうつることもあります。
その他ストレスホルモンにより腸の蠕動運動が亢進する下痢型過敏性腸症候群や、クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、抗生物質など薬物の副作用、アルコール摂取や膵炎、術後の後遺症など、下痢の原因は多岐にわたります。

頻度の高い原因

  • 感染性腸炎
    細菌・ウイルスまたはその毒素により腸の粘膜が傷害され下痢を起こします。
    汚染された食品や水を直接摂取することで感染する「経口感染」のほか、感染者の身体や手が触れたものなどから感染する「接触感染」、感染者の吐物や便の飛沫を吸い込むことで感染する「飛沫感染」があります。
  • 下痢型過敏性腸症候群
    ストレスを感じると脳からストレスホルモンが分泌されます。
    このホルモンが腸に作用すると蠕動運動のバランス調整が乱され下痢の原因となることがあります。
  • 炎症性腸疾患
    クローン病や潰瘍性大腸炎では、便中の水分を吸収する大腸の粘膜が障害されるため、炎症の強い方は下痢を起こすことがあります。
  • 薬剤性下痢
    抗生物質の影響で腸内細菌のバランスが変化し、下痢を来すことがあります。
  • アルコール性下痢
  • アルコールを摂取すると自律神経の働きで腸の蠕動運動が活発になり、水や電解質、糖分、脂肪の吸収が悪くなるため、下痢を起こし易くなります。
  • 術後の後遺症
    胃や胆嚢の手術後は未消化な食物が直接小腸に流れ込むため、下痢を起こし易くなります。

当院の診療方法

細菌やウイルスの感染による下痢症の多くは軽症で、自然治癒するケースが殆どのため薬による治療は通常必要ありませんが、発熱や腹痛、嘔吐などの症状がつらい方に対し、自覚症状を緩和する目的で薬をお出しすることがあります。
また、高齢者や免疫力の低下している方、血便や強い腹痛のある方は、細菌とウイルスを鑑別する目的で迅速血液検査を行ったり、病原性菌を調べるために内視鏡で腸の粘膜を採取し、細菌培養検査を行うこともあります。
また下痢型過敏性腸症候群の方にはセロトニン(5‐HT3)受容体拮抗薬の内服治療を基本とし、整腸剤や便の水分を吸収するお薬、腸の蠕動運動を抑えるお薬、低FODMAP食などと組み合わせ、専門的に治療を行っております。

血便

血便について

消化管のどこかに出血があり、便に血液が混じった状態を血便といいます。
食道や胃、十二指腸など上部の消化管から出血した場合は下血と呼ばれ、便がタールのように黒くなります。
一方、大腸や肛門など出口に近い消化管から出血した場合は真っ赤な鮮血便となるため、便の色や出血の量によって出血している場所をある程度検査の前に推測することができます。

頻度の高い原因

  • 黒色便
    食道がん、食道静脈瘤、マロリー・ワイス症候群(激しい嘔吐後の食道と胃の繋ぎ目からの出血)、胃潰瘍、胃がん、胃静脈瘤、十二指腸潰瘍、胃前庭部毛細血管拡張症など
  • 鮮血便
    大腸がん、大腸ポリープ、大腸憩室出血、虚血性腸炎、感染性腸炎、潰瘍性大腸炎、直腸炎、直腸がん、直腸静脈瘤、痔出血など

当院の診療方法

黒い血便の場合は胃カメラで、真っ赤な鮮血便の場合は大腸カメラで出血の原因を調べます。
なお、普通の大腸カメラ検査は腸管洗浄液を事前に服用し大腸が空になった状態で行いますが、血便の原因を調べる目的で検査を行う場合(S状結腸内視鏡検査)は、浣腸のみで大腸カメラを挿入するため、事前の準備や予約は必要ありません。
また検査中に出血点が見つかった場合は、その場で止血剤を散布したりクリップで止血術を行うことがあります。

胸やけ・呑酸

胸やけ・呑酸について

胸が焼けるような感覚を胸焼けと言い、酸っぱい胃酸が上がってくる感覚を呑酸(どんさん)といいます。また、胃の手術後や身体を横にした際に、胆汁が腸から胃内へ流れ込むことがあり、げっぷなどをした際に胆汁が口の中まで逆流すると非常に苦い味がします。
胸焼け・呑酸が起こる病気の代表は胃食道逆流症(GERD)ですが、食道がんや胃がんが症状の原因となることもあるため、胸焼け・呑酸が長く続く方は必ず胃カメラを受けることをおすすめします。

頻度の高い原因

  • 胃食道逆流症(GERD)
    胃カメラで食道に粘膜障害のある逆流性食道炎と、粘膜障害がなく食道の知覚過敏によって起こる非びらん性胃食道逆流症(NERD)の二つに分けられます。
    逆流性食道炎は肥満や喫煙習慣のある中高年男性に好発する一方で、非びらん性胃食道逆流症(NERD)はやせ型の女性でストレスを感じやすい方に好発する傾向があります。
  • 通過障害
    食道がんや胃がん、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などが大きくなり食べ物の通過障害を来たすと、胃酸が上がり胸焼けや呑酸が起きることがあります。

当院の診療方法

胃酸逆流の自覚症状の強さと粘膜障害の強さは比例しないことも多く、胃カメラ検査で食道に異常がないことを理由に胃食道逆流症(GERD)を否定することはできません。
当院では胃カメラの所見に関わらず、胃酸逆流の症状がある方にはまず、プロトンポンプ阻害剤(PPI)やボノプラザン(P-CAB)など胃酸の分泌を抑えるお薬を処方し、改善がみられない場合は消化管の運動を改善するお薬や、ストレスのある方には依存性の少ない抗不安薬・抗うつ薬などを併用し、症状の改善に取り組んでおります。

胸痛

胸痛について

胸の痛みが起こる原因は多岐にわたりますが、特に緊急性を要する病気の代表が、狭心症や心筋梗塞、肺塞栓、大動脈解離などの循環器疾患や、緊張性気胸などの呼吸器疾患です。
これらの病気は治療が遅れると命に関わることもあるため、迅速な診断と専門病院への救急搬送など素早い対応が求められます。
その他、胸痛を感じる病気のうち診療所で遭遇する頻度が高いものとして、胸膜炎、胃食道逆流症(GERD)、肋間神経痛、筋肉痛、関節痛、がんの骨転移、帯状疱疹、心因性胸痛などがあげられます。

頻度の高い原因

  • 循環器疾患
    狭心症、心筋梗塞、肺塞栓、大動脈解離 など
  • 呼吸器疾患
    気胸、胸膜炎 など
  • 消化器疾患
    胃食道逆流症(GERD)、食道がん、食道けいれん、胃潰瘍 など
  • その他
    肋間神経痛、帯状疱疹、肋骨骨折、がんの骨転移、ストレスによる心因性胸痛 など

当院の診療方法

当院では胸痛の原因を迅速に調べるために、十二誘導心電図や胸部X線検査、迅速血液検査、心筋トロポニンT検査などを行っております。
また、検査の結果、狭心症や心筋梗塞が強く疑われ緊急治療が必要と判断された場合には、速やかに連携先の専門病院へ救急搬送できる体制を整え、万が一の事態に迅速かつ適切な応急処置ができるよう、診察室に自動体外式除細動器(AED)・救急蘇生セット・アドレナリン注射を完備し、定期的なメンテナンスを欠かさず行っております。

動悸

動悸について

普段は感じることのない心臓の拍動を自覚することを動悸といいます。
正常な人でも運動や不安、緊張、ストレスなどにより心拍が亢進して動悸を感じることがあり、動悸を感じる方のすべてが病気というわけではありません。

しかし中には不整脈や貧血、甲状腺機能亢進症、電解質異常などの病気が動悸の原因として隠れていることもあるため、動悸の続く方は医療機関で検査を受けることをおすすめします。

頻度の高い原因

  • 運動
    運動により心拍数が上昇し、動悸を感じることがあります。
  • 不安・ストレス・緊張状態
    自律神経のバランスが崩れ、動悸を感じることがあります。
  • 心臓病
    心房細動などの不整脈や心臓の弁膜症で動悸が起こることがあります。
  • 甲状腺機能亢進症
    甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで動悸を引き起こすことがあります。
  • 貧血
    貧血で全身の酸素供給が不足するとそれを補うために心拍数が増え、動悸を感じることがあります。
  • 更年期障害
    女性ホルモンの分泌が低下することで自律神経のバランスが崩れ、動悸を感じることがあります。
  • 電解質異常
    血液中のカリウムやカルシウム、マグネシウムなどの電解質バランスが崩れると、不整脈や動悸が起きることがあります。

当院の診療方法

来院時に動悸のある方は、聴診で心拍の乱れや心臓の弁の異常、先天的な心臓の異常の有無などを確認し、心電図で不整脈の所見を確認します。

不整脈の中には自覚症状が軽い場合は治療を必要としない良性のものもありますが、聴診や心電図に明らかな異常所見を認めた場合は、確定診断と治療適応の評価のため原則として基幹病院の循環器科へ速やかにご紹介とさせていただきます。

また、血液検査で貧血や甲状腺機能亢進症、電解質異常の有無を確認し、異常所見を認めた場合は、必要に応じて内視鏡検査や超音波検査で異常の原因を検索したり、婦人科や内分泌科など適切な診療科へご紹介させていただきます。

咳嗽(がいそう)

咳嗽について

咳嗽はその持続期間により急性咳嗽(~3週未満)、遷延性咳嗽(3週以上~)、慢性咳嗽(8週以上~)の三つに分けられます。
急性咳嗽のうち最も頻度が高いものは急性上気道炎(いわゆる風邪)で、そのほとんどはウイルス性で多くは自然治癒しますが、高齢者や免疫不全、基礎疾患のある人などでは肺炎や気管支炎へ移行することもあるため注意が必要です。

また、新型コロナウイルスは他のウイルスと比較し感染力が非常に強く、容易に周囲へ感染を広げてしまう恐れがあるため、急性咳嗽の診断にはまず新型コロナウイルス感染症の除外が必要となります。咳嗽が遷延する場合は、肺炎や気管支炎、マイコプラズマ感染症、咳喘息などの可能性がありますので、必要に応じて血液検査や胸部X線検査などを行います。

【画像】マスクして咳する女性

頻度の高い原因

  • 急性咳嗽
    急性上気道炎、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、インフルエンザ、マイコプラズマ感染症、百日咳など
  • 遷延性咳嗽・慢性咳嗽
    咳喘息、アレルギー、肺炎、気管支炎、肺結核、喘息、COPD、間質性肺炎、肺がん、胃食道逆流症(GERD)、副鼻腔炎、後鼻漏症候群など

当院の診療方法

咳嗽は本来ウイルスなどの異物を痰と同時に身体の外へ排出するための生体防御反応であり、安易に薬で咳を止めてしまうと痰が排出できず肺炎が増悪することもあるため注意が必要です。
一方で、激しい咳は不眠や体力消耗の原因となり、慢性的に続くと胸痛や呼吸困難感などを引き起こす可能性もあるため、鎮咳薬は状況に応じて適切に服用することが必要です。

診察あたっては、咳嗽の原因を系統的に鑑別するために、発熱・咽頭痛などの随伴症状の有無や感染者との接触歴の有無、肺雑音、喘鳴、酸素飽和度などを確認し、感染症用の診察室で感染防護のもと新型コロナウイルス抗原検査やインフルエンザウイルス抗原検査(※流行期のみ)を行います。
咳嗽が遷延する場合は、必要に応じて血液検査、喀痰検査、胸部X線検査などを行い、症状が強い場合や咳嗽が慢性化する恐れのある場合は、速やかに呼吸器科専門の病院へご紹介させていただきます。

注意事項

症状のみで病気を自己診断することは、がんなどの悪性疾患や重大な病気を見落とし、早期治療の機会を逃す恐れがあります。自覚症状のある方は必ず医療機関を受診し医師の診断を受けてください。